2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

黒く塗れ

つまらない詩を綴った紙飛行機を屋上から一階の恋人の元まで飛ばした。 僕らのアパートは三十三階建てだったので返事が届くまでの間、退屈だった僕は今宵を我が物顔で支配している満月を黒いペンキで塗りつぶして遊んでいた。僕が百分の一ぐらい塗りつぶした…

アナーキーダンス

部屋中がアルコールの揮発する匂いに溢れ、そのせいで僕の胃は焼け爛れた。またその匂いの齎す不自然な高揚から僕は眼前の暗闇まで踏み込めずに三面鏡の前で髪を切り、けたけたと笑い鋏を持った手で独楽のように回転し続けた。 すると鋏は暗闇をさくさくと切…

アイラブユー

金属音で鼓膜のふやけた少年は自分の眼球を白いペンキで塗り潰すと彼の綺麗な部屋の隅に一度吐いた彼の吐瀉物の中には恋人から届いた手紙が何百枚もあった手紙の内容は何れも酷く汚い言葉の羅列で彼はその言葉の中に恋人の体温を感じていた彼は真白な視界の…

無題

立ち眩む朝には何者かの青い指が頭蓋骨をするり通り抜け僕の記憶を丁寧に連れ去っていく その事を早く司令塔に報告しなくてはならないのだけれど薄らいだ意識は何時も其れを忘れさせる 剣のような朝焼けが何時も僕の舌を切れ落としてその都度僕は死んでそれ…