2012-01-01から1年間の記事一覧

忘却された街

剥がれかけたポスターが風に揺れている。 錆びた噴水には油が浮いていて、それが太陽の光を七色に染めている。 カタカタと鳴る古びた車の窓には、のっぺりと貼りついた雲だけが正しく時刻を刻んでいる。すべてが終わってしまった街には誰一人いない。 それで…

海岸沿い

誰もいない海岸沿いのベンチで煙草に火をつけ、僕は殆ど意味を成していない街灯の明かりを頼りに真新しい本の一ページ目を開く。物語は僕の知らないところで始まる。僕の知らない人の未来のように、確実に、そして決して交わることなく。僕は殆どの文字を認…

相対的な愛

土の匂いのするアコースティックギターで彼女は歌う、「どんな愛も恒久的でないのなら私は何をするのが正しいの?」狭い部屋で爪を噛みながら、彼はぼんやりと思う。「すぐに尽きるような命なら、何を重ねれば良いの?」 君達は綺麗で、僕はただ目を伏せて笑…