2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

飛べない翼〈alt ver.〉

痩せてる彼女の背中には羽根のタトゥー。機嫌が良い時だけ見せてくれるそれは天使みたいな大それたんじゃなくて、飛ぶにはあまりにも小さすぎる羽根。 でも一本一本違う色してて綺麗だったから、いつだったか「これをパレットにして絵を描いたらどんな人でも…

無題

手足の冷たい少女は秋の夜のアスファルトみたいな温度でベッドに寝そべっては煙草をくゆらせていた。ふと頭の奥でぜんまいを巻く音がした。ぎぎぎぎ、と一定のリズムで鳴った。それは時々心音のように少女を小さく揺らしたが、それが少女に大きな変化をもた…

pianissimo peche

君の帰った部屋はとても寒くて、君が換気扇の下に忘れていったタールの少ない煙草に火をつけて君と同じ位置で吸う。二人分のパスタを作るガスコンロの火が手に持つ煙草に火をつけて、僕の感傷は緩やかに加速する。君が煙草を吸いながら考えている事だとか君…

テレビばかり見てると馬鹿になる

テレビの砂嵐が二人の性交をフィルムの向こう側に押し込めている僕らは演技でもするようにマッチでつけた蝋燭の火の中、愛を確かめ合ったけど結局その行為のどの辺りが愛なのか二人は最後まで分からなかっただから朝起きて僕らはパンケーキの匂いの中で永遠…

シベリアのトマト

君のトマトみたいに熟れた大脳を一つ残らず食べてしまいたい。 それから僕は晴れた日のシベリアを想像して水彩画を描くのだ。酷く混乱したシベリアの空は虹色に歪んで、それでも何とか晴天でいるから僕は真黒な傘さして晴天気取りの天気にとどめを刺してる。…

プラネタリウムの塵

君の皮膚でパッチワーク、夜に溶けこめるように赤黒いワンピース作ってあげるから春の風に乗って満月を盗んできておくれよハニー。そしたら僕はオーブンで月の石でも焼いて、星座でも作ろう。 君の視力なんて使い物にならないし星空なんて天井のカビ程度にし…

tired of TV

君の口から垂れた血を甘いキャンディのせいで緑に染まった舌で舐め回すそれから静脈みたいに鬱屈した青の住む夜空をお気に入りの長靴履いて歩こう雨が降ったら僕ら簡単に溶けきってしまうから そうならないようにきちんとレインコートも着てね おやすみ、っ…

アマレット

僕達を置き去りにして雨は降り続けるから水槽は水嵩が増え、やがて溢れたグラスの中、泳いでいた熱帯魚は餌と勘違いして僕達の目を食べちゃったから アマレットジンジャーの匂いのする部屋で僕達はアルコール飲んだみたいにふらふら踊ったそれから深海みたい…