飛べない翼〈alt ver.〉

痩せてる彼女の背中には羽根のタトゥー。機嫌が良い時だけ見せてくれるそれは天使みたいな大それたんじゃなくて、飛ぶにはあまりにも小さすぎる羽根。
でも一本一本違う色してて綺麗だったから、いつだったか「これをパレットにして絵を描いたらどんな人でも有名になりそうだね」って言ったら、彼女は白い煙吐きながら笑って、「この羽根は飛ぶ為にあるからいくらあなたが画家でもあげないわ」なんて言ってた。

彼女とはもうとっくに連絡なんて途絶えてしまったけれど、時々ふと思い出すんだ。
今でもあの羽根は何処かで眠っているのだろうか。それとも何処かに羽ばたいていってしまったんだろうか。