2010-01-01から1年間の記事一覧

さかさまの夏

右と左が別個の夢を見る、もう夜が明けなくてもいいように白い触手伸ばす太陽の首に柔らかな手をかける。左右の目を入れ替えたとして見る景色が同じだとしたら、僕はもうこの町から出ないといけない。けど、まだ眠くて動けない。僕の未来が脆弱だとして、そ…

たとえばこんなストーリー

アイコは電話をする、 誰に?恋人に。 ようやく仕事を終えた彼女に対して恋人の言葉は生命の通っていないような無機質な言葉だった。「おつかれー、煙草切れたから途中のコンビニで買ってきてよ。」そうして会話は終わる、唐突に。 アイコにとってそれが電波…

無題

規定数の風邪薬が彼女の体に浸透していく。夜は深く、まだ明ける気配はない。 彼女はこほこほと咳をする。その度に視界が歪む。彼女は残り僅かな体力で煙草に火をつける。煙草の煙は彼女の視界を具現化しているかのようにたゆたい、それから換気扇の中に吸い…

hear the wind song.

この町に静かに吹く風の中で、微かに君の息づかいを感じる。僕は思うのだ、 「嗚呼、君はこの世界のどこかで生きているのだな」と。その思いは僕の足を動かすだけの力になる。夏の暑さにやられて変性した有機的な愛が、この町に住む僕を歩かせる。どこかの路…

by the way

一体何人が僕の道を通り過ぎただろう、一体何人が僕の道を通り過ぎていくのだろう、君の通いつめた部屋も今ではもう冷たい雨音を響かせるだけの空間になっていて、僕は換気扇の前で静かに煙草に火をつけて、それから眠る。時々夜が寂しげに僕に語りかけてき…

無題

がたん、と小さな音を立ててどこかで何かが外れた。僕の世界は唐突に壊れ、それでも動いている。パラノイアは僕にいつだって小さな夢を見せてくれる。もちろん、それはすぐに裏切られるけれど。僕の夜はもう死んでいるのだ、そこら中の道端で血を流して。窓…

安寧

僕ら捨てられちゃったみたいにどこにも居場所がないね、 安寧もない、 秩序もない、それは僕がそれを求めていないからなのかな。グラスの中、沈んだ船から悲鳴が聞こえて僕はスニーカーの紐を結ぶ。 解けてしまわぬよう、きつく結ぶ。

翳る、

僕は狭い部屋の中で溺れていたい、気泡を吐き出しポコポコと音を立てる様はまるで神秘のように、僕は1人ぼっちでこの世界を閉じる。 一冊の愛おしい本を閉じるような優しさで、愛で僕はこの世界を閉じる。 ホッチキスまみれの愛で塗りつぶされてしまわぬよ…

まちぼうけ

トパーズから海の音が聞こえて、僕はすぐにでも夏に帰りたくなる。鈍行列車に乗って海に行こうか、ただ過ぎる時間をのんびりと目の回るような時間の中にぽつりと佇む静寂の中で君と僕が同時に欠伸をする。 欠けたトパーズから海の音がする。夏はもうすぐそこ…

いつかの夏の始まりについて

金魚鉢の向こう側で赤が舞っている、 夜が小さく瞬いて線香花火みたいだなあって君が呟く。僕はじっとりと濡れた町の空気にやられてベッドに座りこみながら、ぼんやりと夜の隙間で深呼吸をする。 夜ももうすぐ終わっちゃうね、って君が言うから僕は「うん。…

ねむいよ

ねえ、僕はもう眠いよ。また明日、って言って眠ろう寝ても覚めても夢のようだ君がいるなんて、 君がいないなんて、ねえ、僕はまだ眠いよ。まだ起きたくないんだ朝が来ても夜がきても君が来るまで眠っていようかな、 なんて思ってももう眠れなくて起きる。

ドロップ

歩道の小石蹴って、冥王星よりずっと奥の見たことない星を見に行こうよ。空き缶みたく空っぽな雨だ。僕らの足を止める程の力はない。月がなくなって歩道を照らす光がなくなったって、僕らはもう迷わないよって言って歩く。 冷たい手と手を繋いで歩く。 6月…

どこ行く足

千切れた影を縫って、びよんと伸ばしたら月まで届いた。 でも僕は月まで行く気力なんて無くて、今日も履き古したスニーカー履いて近くのコンビニエンスストアまで歩く。 魔法の靴も月の光もない6月の僕にはコンビニエンスストアの薄いビールとハーフベーコ…

瞳の奥の名を

僕は君に名前をつけたい。形も色も関係なく、空に漂う雲のように流動的な名前をつけたい。瞳の奥だけをじいっと見つめて、君の求めている名前で君を呼ぼう。誰にも知られていない、秘密の暗号みたいな名前を呼ぼう。

夜を食む

君が同じ姿勢で煙草を吸うなら何を思うかなあ、 何にもないようなこの町で僕は何かを得て何かを失ったのだ。まばたき一つでこの夜を越えられたら君に何を伝えられるかな、どうでもいいことの中にそっと大切なものを詰めて君に与えられたらなあ、 僕は眠気の…

泣いちゃいそうだ、

僕を照らした電球はいつの間にか割れていて、それでも柔らかそうで、破片に手を伸ばしたら 手が切れて血が出た。温かな鮮血を水道水に溶かしながら、いつの間にか僕は泣いていた。

さよなら半月

中野から高円寺まで煙草すいながら歩く 少しの眩暈と一緒に歩く空には半月で、時々疲れ顔した人達乗せた中央線が嫌に明るい色で走ってく。その中に君がいても気付かないぐらいの速さで走ってく。「さよなら半月、また来て2月」僕 メロディーもリズムもない…

「君は誰を好きかい?」

雨のあとの晴れた日には、何でも許してしまえそうになる「言えなかった言葉をするりと言えそうで」 そんな歌もあったな、僕はまだそこにいるかい、目をこらして見つけてくれよ。今ならどんな歌でも歌えそうなんだ。欠伸のあとの柔らかな午後の日差しの中で僕…

最良の日の為に

いつだって僕達の明日は良き日なのだから、今日はこうして泣くのだろう? 目隠しして歩いた先に僕がいなくてもどうか悲しまないで欲しい君の明日は良き日なのだから、 ちゃんとその準備をするんだよ道の先の橙色した光をこぼさないように目隠ししてても真っ…

夜間飛行

眩暈の中で夢を見た、 足元の覚束ない5月の終わりに何を歌おうか僕は瞬きの中で夢を見たとても優しい とても温かな目を開けて、その夢が終わった時僕は少し泣いて それから蛇口ひねって一口、水を飲んだもう終わろうとしている5月の片隅で何を歌おうかとて…

白痴ごっこ

君の泣いてる理由が嫌なぐらい分かるから、僕は笑いながら何も分からないふりをした。僕達こんなに悩みながら、それでも最後は決まって死んでしまうのだからだったら出来ることがあるはずだ。終わりがあることは悪いことじゃない。いくつでも失って、それで…

君の帰りを待つ足

もうちょっと、 あとちょっと、 僕は死んだのだ。唐突に。歩み寄った足は回れ右して帰る。僕はいないのだ。この水槽に。この水温の中で死んでしまおう。唐突に。突然に。 そして「また明日」歌いながら、遊ぶ。 一人で遊ぶ。 影踏んで遊ぶ。 気付けば1組多…

short film

擦り切れたビデオテープ、フィルムの中の君が手を振る。霞んで見えない逆光みたいな景色の中、君が笑っているのか泣いているのか分からなくて目を細めるけど、暗くて何も見えないよ。短い映画はそこで終わる。ハッピーでもバッドでもない終わりが僕らの前に…

crawl

何もかも少し前のことなのに、 何もかも全て遠い写真の一枚でもあれば何もかも思い通りの元通り、なんて風に上手く出来てはいないけれど何故だか何一つ上手く思い出せない、 暗くて深くて広い海をあとどれだけ泳げば君んちのドアをノック出来る、もうない、 …

悲しくて泣いた、 僕の左手はもう君の右手とは結ばない 今はただ時間が早く流れてこの気持ちを押し流すのを願うことしか出来ないのに深い夜が来ても眠れず、 僕は残酷なほどゆっくり流れる時間の中で心から温かな血を流す。 君の横で何気なく笑う僕はここか…

足音立てて歩こう

僕らバタバタ足音立てて、せわしなく絶えず歩いて なのに見える景色はあの日よりずっと霞んだ夜の中、至るところで死神が手招きしているようなそんな毎日を歩き続けている。時々は誰かと手を繋ぎ、時々は一人で、僕らは歩き続ける。どんなに寂しくても、どん…

10.05.20 01:26

僕が電気を消して瞼を閉じる間に、世界もそっと終わればいい。それがどんなに小さな世界でも小さな僕には広すぎるから。 雨の降る夜は、いつだってあの歌を思い出すよ。 雨がいつか止むのなら、今日は雨のことばかり考えていても良いと思うのだ。 雨が降る、…

無題

パンドラの箱だって開けてしまいそうな、そんな退屈な夜だったから、僕は鼻歌一つで何とか世界にしがみついていた。歌わなくちゃ振り落とされそうな、忘れ去られそうな、そんな夜だから僕は朝になるまでずっと歌っていた。 喉が枯れて血を吐いてでも、君から…

apartment

「雨が上がったからもう行かなくちゃ」と少女は言った。僕は頷こうとしたけれど、何故だかそんな事すら上手く出来なくなっていて、気付いたら少女は居なくなっていた。 僕は伸びっぱなしだった髪を結うと、一杯になっていた郵便受けの中に潜り込んで、広告だ…

under the sun

晴れた朝には花の種を手のひら一杯に掴んで蒔くのだ、君に叱られるまでずっと蒔くの。朝も昼も夜も通り越して、足が壊れて使いものにならなくなっても、君の声がするまでずっと。やがて最初に蒔いた種が育って柔らかな芽を出して、それからゆっくりと年月を…