アイラブユー

金属音で鼓膜のふやけた少年は自分の眼球を白いペンキで塗り潰すと彼の綺麗な部屋の隅に一度吐いた

彼の吐瀉物の中には恋人から届いた手紙が何百枚もあった

手紙の内容は何れも酷く汚い言葉の羅列で彼はその言葉の中に恋人の体温を感じていた

彼は真白な視界の中に鴎を飛ばすとそれに捕まって空を飛んだ

彼は幻想の中で自由でいたかったのだ

しかし恋人の真黒な言葉は彼の幻覚の中でも強固な刃の如き力を持ち鴎の頭を切り捨てると少年は真白なアスファルトに頭を打ちつけて緩やかに呼吸を止めた。