アナーキーダンス

部屋中がアルコールの揮発する匂いに溢れ、そのせいで僕の胃は焼け爛れた。またその匂いの齎す不自然な高揚から僕は眼前の暗闇まで踏み込めずに三面鏡の前で髪を切り、けたけたと笑い鋏を持った手で独楽のように回転し続けた。
すると鋏は暗闇をさくさくと切りつけ、綻びた暗闇から優しい赤が吹き出して部屋中を埋め尽くし同時に僕を包んだ。

僕は羊水のような優しい赤の中で二度と醒めぬ夢に溺れた。

甘く柔らかな夜は太陽が昇ろうが終焉を迎えなかった。