黒く塗れ

つまらない詩を綴った紙飛行機を屋上から一階の恋人の元まで飛ばした。
僕らのアパートは三十三階建てだったので返事が届くまでの間、退屈だった僕は今宵を我が物顔で支配している満月を黒いペンキで塗りつぶして遊んでいた。

僕が百分の一ぐらい塗りつぶした頃、一階の恋人から返事の紙飛行機が届いた。

恋人のピンク色の紙飛行機はいつだってフラミンゴの様に慌ただしく羽ばたきながら屋上の僕の元に近づいて来たので、僕は見落とすことなくきちんと受け取ることが出来たのだ。

ペンキまみれの手で受け取った紙飛行機を開くと、中には星を練り込んで作ったクッキーが三枚入っていた。
それは昼の間、地中で眠っている星達をこっそりとスコップで掘り起こし集めて作ったものだった。僕は恋人の作るそのクッキーが好きでよく作ってもらっていたのだ。


僕達はそうして毎夜、少しずつ星を食べ月を黒く塗り夜を更に深い闇へと変えていった。