怠惰な庭

少年はコホンと小さく咳をして、庭にある小さな椅子に腰をかける。

彼の持つ小さな庭の上には満月がぽつりと佇んでいた。それは町の上に輝く月というよりも、彼の庭の一部としての月と思えるほど丁度良い塩梅で彼の庭を照らしていた。

だから彼もお気に入りの庭から満月を追い出すようなことはしなかった。

彼の庭の中では脆弱な生き物ばかり良く育った。そしてどの生き物も歪な形をしたものばかりだったが彼はその全てを愛おしんだ。

彼の庭ではどの生き物も生き長らえた。脆弱な体を持って、それでも年月を重ねることを赦された生き物は皆元気に生きた。


彼はそんな怠惰な庭で今日も小さな声で歌を歌うのだ。