熱帯魚が泳ぐ水槽に僕はビー玉を雨のように降らせていた。
梅雨が明け、毎日のように見える青空が僕達から水分を奪っていくような日々に、ビー玉を降らせることは僕にとって降らない雨を祈るよりもずっと簡単に心を潤す行為だった。
僕は街中のビー玉を買い集めて、夏が終わるまで雨が降った日を除き毎日それを行った。
やがて秋になって僕はふと水槽を覗くと、水槽には水がもう一滴もなくビー玉は夏の暑さで溶けたのか固まって、ガラス製の立方体に変わっていて、だから熱帯魚はその中で動かないまま生き続けた。
それは完璧な標本のようだった。