舌の上のワルツ

八月にもなったのにこの村の朝の温度はまだ零度辺りをさ迷っている。

夏の間、僕は毎日毛糸の帽子を被って仔羊を抱き寄せるのだ。
そして僕はポケットから良く研かれたナイフを取り出すと素早く仔羊の舌を切り取る。ナイフは非常に切れ味が良いので、仔羊は舌を切られたなんて気付かずにただ声を失うのである。

声を失った仔羊はそれでも歌を歌っていて、僕はその歌がちょうど16小節目に入るところで仔羊の頭をピストルで打ち抜くのである。

それはある人から見れば救いようのない光景だが、僕にとっては唯一の希望だった。