『真』

二月の或る朝、彼は息苦しくて道に座り込んだ。

愛想の無いモッズコートは彼の口を覆って更に息苦しくした。


つい昨日まで晩御飯をあげていた猫が道路で死んでいたのだ。
その猫はいつだって傷だらけだった。きっと色々な所から餌を盗んでいたからだろう。彼はよくその小さな命に感動したものだ。


ああ、でも。

少し経ってから彼は思って、はははと笑った。

此処でどんな傷を負っても最終的に死という毛布にくるまれるということを彼はとうとう知ったのだ。


彼は悟ったようにその屍の前で笑い続けた。