眼球

彼女が猫のように僕の足の甲を嘗めている間、タイマーは「ピピピピピ…ピピピピピ…ピピピピピ…」と甲高い声で鳴いていた。それがやがて鳴き止むと彼女はキッチンへ行って二人分の伸びきったパスタにトマトソースをかけて僕の所へ持ってきた。
僕らは「いただきます」と小さく言ってからパスタを食べた。
パスタを食べ終わると彼女は食器を片付けてからデザートとして僕の体中をカッターナイフで切りつけては傷口を嘗めていった。僕はただジェットコースターに乗せられたように矢継ぎ早に頭の中で浮かぶ映像を左目で感じる一方で、不感症の右目は窓の外の澄んだ青空を眺めながら「雨が降ればいいのに」と思っていた。