『別離』

街中のものが気化し始めていた。例えばまず高層ビルが消えた。それから電波塔が消えた。それから徐々にマンションやアパートが消えた。

その原因は太陽が地球に近付いたからだった。始めの間、科学者達は一斉にその理由を解明しようとしたがそれも長くは続かなかった。どんな理由にしろ誰も太陽を押し戻すなんてこと出来ないからだ。

そうして騒いでいる間にも太陽はどんどん近付いて地表からは色々なものが剥がされていった。

みんなは怖がって地下に逃げたり、金持ちなんかは宇宙に消えたりしたけど僕は何だか楽しくて、自分の家の屋上で日向ぼっこなんかしていた。

ゆっくりと気化していく自分の体とは別の何かがそこに残った。そうして僕は肉体と別れたのだ。