教室

彼は他人を喜ばせるのが得意だった。他人が何を求めて自分に接してくるかというのが顔を見ればまるで文字を読み取るように正確に分かるのだ。
それ故に彼は他人から非常に好かれていた。

しかしながら、彼には一人だけ全く何を求めているのか分からない人がいた。
それは自分自身だった。
彼は他者を満たすことは出来たが、自分が何を求めているか分からない故に満たすことは出来ずにずっと空っぽのままでいた。

もしやこれかも、と思い女の子とキスをしたり煙草に酒も試したが満たされるどころか、どんどんと何かを失っていく気すらしていた。



彼は今日も教室の一番後ろで授業を受けている。
綺麗な制服を着て、先生の求めるものを正確に把握しながら授業を受けている。