出血

娼婦が裏路地で男達に殴られて鼻血を出した日、僕は表通りを咥え煙草で歩いていた。
叫び声も勿論聞こえたけど、猫か鴉の鳴き声にしか聞こえなかったから当然助けなかったよ。
そうして僕はデパートに辿り着くとエレベーターに乗ったんだ。
エレベーターの中は正装した貴婦人ばかりで乗り込んだ瞬間に眩暈がしたけど、何とか持ち直して乗ったんだ。
すると、エレベーターは遊園地のコーヒーカップみたくグルグル回り始めて急激に落下し始めたのでふらつきながら貴婦人のパニエに潜り込んで何とか僕だけ生きていたんだ。
勿論、貴婦人達は全身血まみれでグニャグニャだったんだけど、服装は正装のままで何故かそれが妙に滑稽で、僕はエレベーターのワイヤーを昇って帰ったよ。