右手

僕が公園で焚き火をしている頃

父さんは火事場から逃げ出した。
その日の晩、父さんの右手は真っ黒こげだった。

その日以来手も繋げず終いだったので僕は父さんが嫌いになって、人形とばかり話しているよ。


ある日、人形は右手を動かして僕と手を繋ごうとしてきた。
僕は怖くなって手を振り払うと人形の右手は外れ、人形は「こっちでも駄目だったか。」と小さく父さんの声で言ったんだ。