無題

咳をするたび息が白く濁る。

1月の重苦しい朝に、僕はチョコレートを一欠片ほど口に入れながら立っていた。
そこは海だった。
白み始めた空はまだ透明度が低く遠くの島どころか近くの船すら映し出さなかった。
それでも僕はそんな景色を眺めながら深呼吸をするたび、心が透き通っていくのを感じた。
それは感覚的なことの筈なのに、完全な手触りとして僕の中に残った。

そうして僕は僕を覆った濃い霧をようやく捨て去ることに成功したのだ。