blue berry blue

アルビノの胎児は水槽で眠っている。


僕はバケツに入った月の欠片を一摘みほど掴むと右ポケットに入れ、次に蛇口から溢れる夜を水筒に入れて家を出た。

外は太陽が出ていないのに雲一つなくてそれはそれは心地良く、気分の良い僕は家の近くの小さな丘を登った。

丘は見た目以上に長く、僕は月の欠片をボリボリと食べ、夜で喉を潤しながら歩き続けた。

丘を登り切ると空は頑張れば触れられる位置まで来ていたので、背伸びをして触ってみると厚紙のような質感だった。僕は左ポケットに入っていた裁縫用の小さなハサミを取り出すと、青空を切り取ってハサミと一緒に左ポケットに仕舞った。
切り取られた青空の隙間は海になっていたけれど、疲れていた僕は泳ぐ気になれなかったのでそのままにして家に帰った。

家に帰るとアルビノの胎児が目を覚ましていたので、僕はバケツから月の欠片を取り出して水槽に向かって幾つか投げ入れるとアルビノの胎児は一つ残らず食べた。
僕はそれを見届けてから火に鍋をかけ青空を煮詰めてジャムを作った。

それはブルーベリーみたいな味がして、僕はありきたりだなあ、と呟いて少し食べた後に水槽の中に全部入れるとアルビノの胎児は赤い目をして青空をずっと眺めていた。